日本音楽即興学会(JASMIM)2009大会報告



'The Harmolodic Theory of Ornette Coleman'


堀上みどり

HORIKAMI Midori

(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)


【概要(大会抄録記載)】


本研究は、ジャズ史上最も革新的なアーティストのひとりであるOrnette Coleman(1930~/alto saxophone, tenor saxophone, violin, trumpet 奏者・作曲家)が掲げるHarmorodic理論について、考察するものである。  フリージャズの創始者のひとりであるOrnette Colemanは、1930年、テキサス州フォートワースに生まれる。7歳の時に父親を亡くしてからは、生活が非常に厳しくなる。10代半ばにA.Sax.を入手し、独学で学習し、高校卒業後、ビバップに本格的に取り組む。ある時、曲の全てのコードを頭に入れた後、頭の中を空っぽにして無心でサックスを吹いた。このときから、コードチェンジのパターンに従わずにいかに即興するかという彼の探求が始まる。家族の生活のために音楽をしていてそれが嫌になったとき、母親から「誰かにおまえの魂のお代を払って欲しいっていうのかい。」と言われ、人がやったことのない音楽をしようと決意する。そして、自分のことは何でも自分で決めることにした。(この母親の言葉については、デリダが大変興味を持つ。)彼のコードチェンジによらない独創的な即興は、バップ全盛期の当時、彼のプラスチック製の楽器とともに理解されず、ニューオーリンズやロサンゼルスでは、彼が演奏を始めるとステージを降りてしまうミュージシャンが殆どだった。しかし、彼は自分の音楽を諦めなかった。1958年レコードデビュー、1959年ニューヨークデビューを果たし、オーネットコールマン論争を引き起こす。そして、《Skies of America》(1972)で初めて、Harmolodic理論を世に表明する。 Ornette ColemanのHarmolodic理論について、「よせばいいのに、…中略…これは理論でも何でもなくて、まあ哲学ではあるかもしれないが、音楽理論としては疑似科学もいいところだ。」(菊地成孔, 2005)という考えに同意する人も多いことだろう。曖昧、抽象的で、「これがHarmolodic理論だ」というものが存在しない。 Litweiler(1992)には、メロディーを演奏した後で何をするのかは全く自由で、自分たちが同じ空間で演奏していることを意識し、メロディーに耳を澄まし、ひとつのアイディアから様々な違った方向にメロディーが変化していくのを聞き取らなければならない。どうしたらもっと自信を持って自分自身を表現できるかを示すものであり、豊かな多様性があるだけでなく、個性をも尊重するとOrnette Colemanは述べた、と書かれている。 本研究では、Harmolodic理論に何か客観的なものが存在するのではないかという視点に立ち、Ornette Colemanのベースラインに対するソロの分析を通して、この理論の解明を試みたい。また、同じ時代のウェザー・リポートの音楽や、一足先を行ったマイルス・デイビスの音楽との比較を通してわかることがあるのではないかと考えている。


〈参考文献〉

・菊地成孔・大谷能生 (2005) 『東京大学のアルバート・アイラー~東大ジャズ講義録・歴史編』メディア総合研究所

・Litweiler, John. (1992) /Ornette Coleman: a harmolodic life,/ Da CapoPress (仙名紀訳 1998)『オーネット・コールマン』(ファラオ企画)



【報告】


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