日本音楽即興学会(JASMIM)2009大会報告



'One Approach toward Free Improvisation by John Stevens'


寺尾孝太

TERAO Kota

(ゴールドスミス大学)


【概要(大会抄録記載)】


イギリスの即興演奏家ジョン・スティーヴンス(1940-1994)は自身の音楽ワークショップを通して、即興演奏の可能性を追求していった人物の1人である。即興音楽の先駆者として知られる デレク・ベイリーはその著書‘Improvisation’の中で「イギリスで最初に自由即興演奏を教えるということを始めた人」としてスティーヴンスを紹介している。彼のアプローチは自由即興演奏を通して参加者の音楽の経験、演奏技術に関わらず、誰もが容易に参加できる方法によって音楽をつくっていくものである。その音楽づくりは個々の音楽以上に集団でのアンサンブルによって創造されていく点に重点が置かれている。このような彼の活動はコミュニティ・ミュージックとも呼ばれ、そのアプローチ、音楽ともに興味深いものがある。 彼のアイデアをまとめた著書として‘Search and Reflect’が1985年に出版されている。この本は彼の哲学とも言うべき即興演奏に対するアプローチが様々な実践的な小品にかたちを変えて紹介されている。これは実際に彼のワークショップで使われていたもので、段階を経ることによって自由即興演奏へと向かっていく構成がとられており、まさに即興演奏のための導入本と言えるだろう。


この著書は音楽経験、演奏経験においてさまざまなレベルの人を対象に書かれているが、そのアプローチは例え経験豊かな人にとっても決して飽くものではなく、むしろそこに示唆されているものにはシンプルであるが音楽を演奏するに当たっての重要な要素が多く含まれている。ここから即興演奏というものがいかに音楽にとって欠かせないものであるかということがうかがえるのであるが、それは彼の作品を実際に演奏することによって多くのワークショップ参加者が感じてきたことでもある。


今回のこのワークショップ企画では、‘Search and Reflect’に示された彼のアプローチを中心に彼が示した自由即興演奏のためのアイデアを紹介し、実際に音にしながら、参加者とともに即興音楽について探求していきたいと思う。また、参加者のアイデアによってスティーヴンスのアイデアをもとに新たなアプローチへ発展していけることも十分に考え得ることである。そのような音楽づくりの場としてこのワークショップを企画したい。


【報告】

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