日本音楽即興学会(JASMIM)2011大会報告


【発表者】
ユミ・ハラ・コークウェル(Yumi Hara Cawkwell)
School of Arts and Digital Industries, University of East London
作曲、即興演奏


【要旨(大会抄録記載)】
大学レベルにおける即興音楽教育の評価について、本学会での発表、シンポジウムを通じて問題提起してきたが、今回はイーストロンドン大学での「その後」の報告をしたい。過去の討論から浮き彫りになってきたのは、評価を困難にさせる主な要因には評価する側とされる側の問題がそれぞれあるということであった。


評価される側の主な問題点は、主にダンスミュージックのDJやプロデューサーといった「保守的な」音楽の美意識をもちなおかつ普段楽器を演奏しない学生たちが、グループ演奏で不利であると思い込み、そのために正当に評価されないと感じることがあるということである。


評価する側の問題としては、学生の音楽的文化的バックグラウンドがさまざまであり、完全に自由な演奏をさせるとジャンルが余りにも多岐にわたってしまうため、学生全部に同じ評価基準を適用するのに困難を感じる場合があった。


当大学では課題設定と評価を公平にするために、科目ガイドに詳細な課題のガイドラインと評価基準を明確に掲載することが推進されている。この方針に沿って、グループ演奏課題では、週ごとの講義とワークショップで扱ったジャンルの即興テクニックのどれかを必ず用いることという条件を入れた。つまりこれまで完全に自由選択であったジャンル、スタイルをある程度制限したわけである。


また、昨年外部の試験官が交代し、音楽コース全体として、グループだけでなく個人の課題を増やすよう勧めがあり、これまで実技はグループ演奏だけだった即興の科目でも個人課題を導入した。不特定の楽器のアンサンブルで、技術的にいろいろなレベルの演奏者のグループを対象に、リハーサルなしで、簡単な指示のみで演奏できる半即興曲を用意し指揮する、という課題である。


個人課題の演奏日程をグループ演奏日程の前に設定したが、普段演奏しない学生にポジティブな影響を与え、彼らの自信につながったようであった。グループ演奏のあとで実施した科目のアンケートには評価に対する不満は全くみられなかった。


今回、個人課題の方に音楽的に興味深いものが多数あった反面、グループ演奏が平凡に終わってしまったものが多かったので、評価の問題を超えて、音楽的な発展を目指す課題づくりをしていくにはどうしたらいいか、今後より一層の考察を深めていきたい。

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