日本音楽即興学会 JASMIM

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ニュースレター

 歳森彰さんにインタビュー#1/3

記載:2011年1月15日

JASMIMレター0027(2011.1.15)
[歳森彰さんにインタビュー#1/3]
インタビュアー・編集:若尾久美

今回は「無音ストリート」で、ここんとこノリにノッテおられるアラトーリこと歳森彰(Toshimori Akira)さんです。歳森さんは学生時代からジャズピアニストとして活躍。そして、その後は長らく演奏活動を離れておられたそうです。48歳のとき、21年ぶりに復帰(2005年)、ライブを再開されました。現在はもっぱらストリートミュージシャン活動――いわく「ご迷惑かけない無音ストリート(無音ライブ)」――をほぼ毎日実践されています。これはどんなストリートなんでしょうか? 「無音」とはなんなんでしょうか? 

本文

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JASMIMレター0027(2011.1.15)
[歳森彰さんにインタビュー#1/3]
インタビュアー・編集:若尾久美
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インタビュー日付:2011.1.2

今回は「無音ストリート」で、ここんとこノリにノッテおられるアラトーリこと歳森彰(Toshimori Akira)さんです。歳森さんは学生時代からジャズピアニストとして活躍。そして、その後は長らく演奏活動を離れておられたそうです。48歳のとき、21年ぶりに復帰(2005年)、ライブを再開されました。現在はもっぱらストリートミュージシャン活動――いわく「ご迷惑かけない無音ストリート(無音ライブ)」――をほぼ毎日実践されています。これはどんなストリートなんでしょうか? 「無音」とはなんなんでしょうか?

歳森彰さんのブログ 48歳で始めた「下積み」音楽活動日記

———–(インタビュアー) 無音ライブの「ご迷惑かけない無音ストリート」は、始められて2年目ですか?

(歳森彰) 2009年6月からです。

———-じゃあ、1年半くらい。それにしてもライブ回数が多い、はんぱじゃない。

昨年(2010年)の10月あたりからはほぼ毎日。

———-どんなライブなんですか?

なにをやっているのかというと、ストリートのライブなんですけども・・・電子楽器は音を出さないでおけますね――僕が使っているのはデジタルピアノですけど――スピーカーをオフにすれば音が出ない。それでワイアレスヘッドフォンを用意して、プレイヤーもオーディエンスもそれを使う。オーディエンスはもし聞きたければワイアレスヘッドフォンで聞いてもらう。ヘッドフォンをつけなければ無音・・・聴こえない。

———-普通、ストリートでスピーカーを持ち込んで大きい音を出そうとしているのと逆ですね。ワイヤレスヘッドフォンはそのために用意されたんですか?

はい。椅子を2つ持って来て、ヘッドフォンは4つ用意しています。

———-どんなところでやっておられるんですか?

今は京都市営地下鉄『市役所前』駅の改札横です。ちょっと空いている場所があって、そこは京都市の地下鉄が企画した「サブウェイ・パフォーマー」の演奏場所なんです。去年の10月からそれに登録して予約してやってます。

———-それで俄然回数が増えたんですね。で、そのきっかけはどういうことだったんでしょうか?

えーっと、おおまかに3つのことがあるんです。一つは「演奏の場」。どのような演奏の場で演奏すればよいのだろうかと。というのも演奏の場はだんだん変わっていってるんじゃないか、と思って。2つめは「演奏行為」。演奏行為ていうのをなんとかしたい。それは、音楽のあり方が変わってきているときに演奏行為ということの復権というか、もう一度なんとかしたい。

———-コンサートに行かなくても音楽が聴けちゃうとかダウンロードできちゃうとか、そういうことを指していらっしゃるんですか?

ええ、再生装置ていうのがとことん進化しだしているので、それに対して人間が演奏する演奏行為というのを、なんとかしたい。それと3つめは自分の都合。自分の年齢的なこととして「演奏の鍛錬」。鍛錬を今しとかないといけない、という・・・そういう自分の都合。

———-で、実行に移すきっかけは?「よし、明日行くぞ」というようなきっかけがあった?

「よし、明日」ていうのじゃないけど・・・だいぶ前から用意したり実験したり。ほんとにできるかとか、音がちゃんと聴こえるかとか、ヘッドフォンの性能やなんかも・・・準備するのに1年くらいかかって。その間にさっきの3つのようなことをじわじわ考えながら・・・意義立てして「これはやらないといけない」とだんだん盛り上げて。まあ季節も良くなった(2009年)6月――それは四条大橋でしたけども――最初は一人では不安というか楽器も重たいので、知り合いの人に手伝ってもらってやりました。あとは全部一人でやってますけど。

———-へー、面白いです。

面白いという方と、最初からこれは修行だとか、あるいは自虐的だと言われる人も。

———-面白いって言ったのは、他に類を見ないあっけにとられる面白さがあるんです。そういう意味でとても愉快。

はい、楽しい。とっても楽しい。仕組みとかねらいとか、わかってもらえる人もたくさんいます。それは、街中に音楽が至る所にあふれていて、さっき言った音楽再生装置――個人レベルでものすごく小さいのに、莫大な数の音楽が入っている――あたかも本を朗読するかのように、一人で静かに音楽をよりどりみどりで聴いてる。街中では、店舗ごとに別の音楽を鳴らしている。あれは、いったい音楽なんでしょうか? どう思われますか?

———-え? お店とかでかかってる音楽?

いくつもいくつも聴こえてくる。

———-あれは使っているものは音楽だけど、建物、看板が入り乱れてごちゃごちゃなってるのと同じように思ってるんですけど。

音の場合、侵入してきますよね。防御のためにやってるみたい。

———だって、隣りの店よりこっちにきてもらわないと困る。

ある意味、隣りの国が軍隊持ってるから、こっちも軍備しないと侵入してこられる、みたいな。

———-それも生の人間じゃなくてワラの人形たてておくみたいな、そういうアイデアかな、再生装置は(笑)

(笑)そういう音楽再生装置っていうのは、結局のところ音楽から音を切り離しているわけですよね。音楽再生装置が普及するのはほんの100年前とかそんなんで、それ以前は楽器で、人が楽器を鳴らして音楽。それが音楽だった。ところが演奏行為がなくても再生装置が鳴ってる。それじゃあ演奏行為ていうのが、危うくなってるんじゃないか、という気があります。

———-それでさっき「復権」と言われた。

復権て言ったらちょっとオーバーなんだけど、自分にとっての演奏行為をなんとか成り立たせたい、というやむにやまれぬ思いがあります。人々が音楽再生装置から鳴っているのを音楽と見なしてるところに、あえてヘッドフォンから――これも再生装置の一部を構成するようなもんですけど――そこから音を鳴らして、リアルには音を消してしまう。そしたら演奏行為ていうのがそこに残ってますよね。そこを見ればプレイヤーが演奏してる「行為」が見える。それが演奏行為をなんとかしたい、というひとつのきっかけになるんじゃないかと。

———-でも、普通はライブハウスみたいなところ、聴衆のいる箱の中でやりますよね。それと、こういう公の場でやること、そこで音楽がどういうふうに関係してくるのか、どうなんでしょう。

それは、きっかけの1番目に言った「演奏の場」というのをなんとかしたい、ということです。えーっと、僕のこの30年くらいを振り返っての話しになりますけど、僕はジャズピアノを若いときにやりだして、ジャズをやって生活してたんです。いまから思ったら信じられないような状況で。そのころは深夜のバンドとかもあって、けっこうお金はよかった。これは、いまでは考えられない。それからしばらくして僕は自分の演奏が嫌んなって、引きこもった。それで20年くらい経って、また浦島太郎みたいに出たんです。これはロ-カルな話しですけど。それで、そんときにジャズに関してね、「あれ?」っと思ったことがある。


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