日本音楽即興学会 JASMIM

The Japanese Association for the Study of Musical IMprovisation
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ニュースレター

 新井陽子さんへインタビュー(前半)

記載:2010年12月16日

JASMIMレター0019(2010.12.16)
[新井陽子さんへインタビュー(前半)]
インタビュアー・編集:若尾久美
インタビュー日付:2010.12.06

今回のレターは、ピアニストの新井陽子さんへのインタビューです。先月ヨーロッパでライブをされたことや、ご自身の即興演奏のこと、そして学会のコンテストについてのご意見やアイデア、などをスカイプでお伺いしました。

本文

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JASMIMレター0019(2010.12.16)
[新井陽子さんへインタビュー(前半)]
インタビュアー・編集:若尾久美
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インタビュー日付:2010.12.06

今回のレターは、ピアニストの新井陽子さんへのインタビューです。先月ヨーロッパでライブをされたことや、ご自身の即興演奏のこと、そして学会のコンテストについてのご意見やアイデア、などをスカイプでお伺いしました。

———–(インタビュアー) ヨーロッパに演奏に行かれたのは2度目ですか?

(新井陽子) 今回3度目です。

———-つい先月と昨年ですね。それと?

20年前に1回行ってまして、小さな劇団に音楽でくっついていったんですけども。ドイツを回って、91年でしたからベルリンの解放直後・・・。

———-日本のミュージシャンとやるのとは、ずいぶん違うものを感じられたのですか?

ええ、向こうの状況を知りたい、というのがあったんです。日本でよく言われることですけど、即興の演奏しているときの独立性みたいなもの・・・海外の人と演奏するのと日本人同士で演奏するのとではその感覚が違うよ、というようなことをいろんな人から聞くのですが、実際にどんなものだろう、と。

———-どちらに行かれたのですか?

ロンドンとパリへ行ったんです。ロンドンは、ギタリストのジョン・ラッセルさんが長年仲間と続けている「モポモーソ (mopomoso)」という即興のグループがありまして、毎月のようにコンサートをやっているんです。

———-毎回同じ場所で?

「ヴォルテックス (The Vortex Jazz Club)」という市内のジャズクラブです。そこでモポモーソは月例コンサートをやっていて、年に一度夏にフェスティバルがあって、いろんなところからいろんな人が来て・・・それを20年続けているんです。ジョン・ラッセルさんが去年日本にいらしたときに一緒に演奏させていただいて、そこからつながりが出来て。

———-それはジョン・ラッセル氏が個人で開催されているのですか?

ジョン・ラッセルとクリス・バーンというピアニスト、二人が中心になってやっているみたいです。ほかにもロル・コックスヒルとか、いろいろなミュージシャンが集まって演奏している。

———-そこに行かれて、実際に演奏されてどうでしたか?

わたしが演奏したのは11月の月例コンサートだったんですけど、そのとき演奏者は―ベテランも若い人も―みんなで10人いました。イギリスのミューシャンが7人、日本人が3人です。福田さんというヴァイオリニストの方がいらして、20年くらいイギリスに住んでいて普段はクラシックを演奏するんですが、モポモーソでもよく演奏していて、即興も素晴らしい方です。あともう一人は、バイオリンの金沢に住んでいる島田さん。彼もコンタクトをとって日本から来られたのです。

———-新井さんはかなり長く即興演奏されていますね。

そうですね、もう12年くらいになります。

———-新井さんにとって日本で演奏したり、今回のように海外で演奏したりというときに、即興音楽はどういう意味合いがあることですか?

ああ、即興をやるということ?

———-ええ、いま主に即興演奏されてるんですよね。

そうですね、わたしは即興をやることで教わってきたことがある、と思っているんです。それはどういうことかというと・・・最初は、音楽が好きでイギリスのロックとか聴いてたりしていて、そして、クラシックのほうへ。そう、音楽は長い間やって来たんですけど・・・。演奏する時っていうのは、自分が思っているところのどこを取ってどう表現するか、っていうことになると思うんです。そうしたときに、果たして自分が何かのスタイルの中で解釈を表現するみたいなことでいいんだろうか、っていう・・・。

———-それは音楽のスタイルのこと?

クラシックにしろジャズをやるにしろ、「自分はこういう風に音楽を作るよ」とか、「こう思うんです」っていうやりかたが、ほんとに自分がやりたいことなのか、いい音楽になるのかどうか、というような疑問を感じ始めて。

その頃シリーズでコンサートやってたりして、だんだん色々なことに気づくようになって来た。

———-そこでは既成の曲のコンサートを?

現代曲とか近代曲のプログラムを考えて、ちっちゃな喫茶店でシリーズでコンサートをやっていたことがありました。即興的なことは、もともと高校生くらいの時から「めちゃくちゃ弾きー」とかいって、わーっと、自分が好きなように弾いたりとか、遊びでそういうのやったりしていたんですけど・・・もしかして、そういうふうに自分が今、この瞬間に音を紡いで行くことの方が「面白いかなあ?」と。

———-自分の今を瞬間的に捉えるような感じ?

ええ、自分の引き出しの中をかき回してみるみたいな。その瞬間瞬間に、どういう音響を作っていくか。そして出て来た音を聞いて、また音を紡いで行く、・・・そんなことのほうが面白いかな、って思い始めて。

———-それは大学を卒業されてから?

もう卒業してだいぶん経ってから・・・卒業したすぐ後は、もう、ほとんど弾きたくなかったですね。

———-え? 弾きたくなかった?

はい、2年くらいピアノ弾いてないときがありました。

———-さっき、即興は12年前くらいからって言われたけど、じゃあ、即興をメインの活動にされてからはクラシックとかの、いわゆるありものの曲とかは弾かれないのですか?

ええ。家で弾いたり、たまにには小さなライブで弾いたりはしますけど。私はどうも楽譜があると、ちゃんと弾けるかどうか、っていう背中にしのびよる束縛みたいなものを感じてしまって、そういうものから自分をどんどん解いて心理的に解放して行く、そういうことが私には必要なんだ、と思ったんですね。

それまでは、自分が一つの固まった石みたいになっていて、即興をやって行くうちにタマネギの皮を剥くみたいに、一つ一つ、皮を剥いでいった、っていう感じがありますね。それで今、どういうふうになったかって考えると・・・10年前とは、うん、だいぶ変われたかな、と思います。

———-ああ、なんかわかるような気がします。面白い表現ですね、今のは。

今日は豚肉の生姜焼きだったんで(笑)

———-(笑)たまねぎがあった? それで今回ロンドンで演奏されたことで、たまねぎがもう一枚はがれる自由さみたいなのを感じてこられたのですか?

そうですね。あちらに行って、いろんな人の中にボンと入って演奏しているとすごくラクっていうか、自分がなにしてても自由なんですよね。向こうが勝手に自分のことやっててくれるし。こんなに沢山の人数でいっしょに演奏しているのに、あ、なんかこっちのコレ聞いてるな、みたいな感じがあって。コミュニケートしながらお互いに好きなことがやれる、という感じをすごく味わって来ました。

———-あ、今回?

ええ、今回。それから、みんな自分の大切なものの為に苦労してやってるな、っていうことがいろいろ話しててわかりましたし。みんな大変な中でがんばってやってるんだなあ、と。


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