音楽における即興性は、あらゆる音楽文化に見られる現象だと言ってよいでしょう。唯一例外だったのは、記譜に大きく依っていて即興性を少なからず排除していた西洋近代の音楽文化だけと考えられます。現在では、ジャズ、ロック、現代音楽、キリスト教オルガン音楽、インドやイランなどの民族音楽など多くの音楽領域において即興は大きな意味を持っています。
フリー・インプロヴィゼーションを提唱したデレク・ベイリーが「インプロヴィゼーション」という本を書いたのは1980年のことですが、その頃から民族音楽学、音楽学、音楽療法等の領域で、音楽即興に関する研究が増え始め、以前よりも実りが期待できそうなこの領域を切り開いていきそうな研究の方向を提示するような書も多く出現してきています。もちろんベイリーの考えも、現在の音楽に少しずつ影響を与え続けています。またポストモダンの哲学などの状況も、こういった音楽即興を考えるための自由な思考の空気を用意してきたことでしょう。
こういった状況で、われわれに必要なのは音楽即興を研究、実践両面で自由かつ学術的に議論できる場ではないかと思い、本学会へのご参加をみなさまに呼びかけます。
2008年2月21日
2008年9月14日修正
若尾 裕
2008年9月14日に行われた日本音楽即興学会設立集会の様子です。