1930年に東京で生まれた大野松雄は文学座を経て、数多くの映画と黎明期のテレビで音響制作に携わり、音響デザイナーとしての地位を固めた。アニメーション番組「鉄腕アトム」では電子音響を用いた効果音を制作し新しい音響表現を産み出した。その音は現在にも影響を与えている。
その後つくばEXPO’85、未来の東北博覧会(87)、アジア太平洋博覧会福岡(89)など博覧会の音響デザインを手がけ高い評価を得ている。商業分野だけでなく個人の映像作品、アニメーション作品、記録映画、科学映画など幅広いジャンルでも音響を担当し、小杉武久氏主催のタージ・マハル旅行団の記録映画「旅について(72)」では自ら制作した。
近年は音楽家のレイ・ハラカミのアルバム「レッドカーブの思い出」に史上最高齢のリミキサーとして参加、鉄腕アトムの音響をまとめた「鉄腕アトム音の世界」や音響作品「そこに宇宙の果てを見た」などが再発売され、新作として「大野松雄の音響世界(05)」「YURAGI#10(11)」を発表。
2009年には草月ホールにて初のコンサートとなる「大野松雄〜宇宙の音を創造した男」が<東京の夏>音楽祭にて開催されるなど、音の作品が幅広い層に支持されている。
またライフワークとして知的障がい者施設である社会福祉法人大木会もみじ・あざみ寮に深く関わり、記録映画の制作から寮生による劇での音響制作など、公私を超えた関係を40年以上築いている。
2011年公開された映画『アトムの足音が聞こえる』予告編 です。
音響を手がけた映像作品
57年勅使河原宏監督「いけばな」
59年松本俊夫監督「安保条約」
60年桜映画社/中外製薬「自然のしくみ―ノミはなぜはねる―」
64年真鍋博製作アニメ「潜水艦カシオペア」
76年暗黒舞踏の土方巽出演映画「風の景色」
77年東宝映画「惑星大戦争」等多数。東京・青山の大野のスタジオは60年代から70年代にかけてアヴァンギャルド周辺芸術家が集う梁山泊となっていた。出入りしていた音楽家に、一柳慧、小杉武久、松村禎三、福島和夫などがいる。
68年以来、滋賀県の知的障害者施設で演劇活動に協力し、知的障害者と施設の記録映画を制作。つくばEXPO’85、未来の東北博覧会(1987)、アジア太平洋博覧会福岡(1989)、などパビリオンの空間音響システム・デザイナーとしても知られる。93年から01年京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)講師。アルバムに「大野松雄の音響世界」3タイトル(キングレコード)ほか。09年3月、「東京国際アニメフェア2009 第5回功労賞」受賞。