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JASMIMレター0034(2011.02.19)
[横井一江さんにインタビュー#2/2]
インタビュアー・編集:歳森彰
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インタビュー日付:2011.02.03
———–はい、何となくわかります。じゃあ、今のことは来年予定の学会のコンテストの話とつながるかとは思うのですけど、そういう座標軸についてです。コンテストでは審査して一応順位をつけると。審査の理由をもう一度俎上に上げて何らかの検討を加える、分析、批判か、学術的なものか、そこまではわからないのですが、決まっていませんが、さきほど言われた、座標軸、それ自体の問題であると思います。それをどのようにもっていけば? 何か?
コンテストですよね・・・。正直なこと言って、どうやってコンテストするんだろうな、と。さっきも申し上げた通り、音楽における即興は、バロック音楽のオルガンもあれば、完全フリーインプロビゼーション、中には自作楽器で何か即興演奏やる、いう人もいるだろうし、ジャズなどの語法に則って即興演奏する人もいるだろうし。いったい、何をもって審査基準とするか、というのが、どうにもよくわからない。
———–はい。
どうするのかなあ、と思って興味津々です。
———–それぞれの音楽にそれぞれの基準軸が内包されているような。
なるほどね。ただ、そこで考えられるのは音楽そのものとしてのよしあしなのではないのかしら。コンテストだから、点数つけて、1位、2位、3位と順位がつくのですよね。それが音楽そのものに関する評価なのか、その人の演奏における即興部分に対する評価なのか、というのが、まず、首をひねるところでありますね。どうするのだろう?って思う。
———–横井さんご自身が、いろんな演奏が登場したとき、それを審査されるとすれば?
私だったら・・・、そういうおこがましい立場にはいたくないんだけど、基準は音楽そのものですね。インプロヴィゼーションが悪かったら話にならないんだろうけど。即興演奏としていいかわるいか、というのもあるとは思いますが、やっぱり音楽として面白いか、面白くないか、っていうことかな。もし私だったらそうする気がするな。
人によっていろいろあるだろうなあ・・・、どうなんだろう?という疑問は出てきます。でも、そこで順位をつけなきゃいけない、という立場になったら、音楽としての表現とオリジナリティということになるのかしら・・・。そして、音楽にエネルギーを感じたもの、印象的だったもの、後に何か残ったもの・・・
———–その審査と、もう一段階、それをメタにというか、その審査理由を文章化しないと検討できませんね。
そうですよね。
———–こういう理由で、基準で、というのを言葉にした上で。そういうのがいくつか現れれば、それに対して、この方はこういう審査基準、別の方はこういう審査基準、それに対して論評、分析するとなれば、それはそこで終わってしまうのか、発展があるのでしょうか、どうでしょう?
クラシック音楽ならコンクールっていっぱいありますよね。ジャズも最近はコンペティションがないことはないけど、なじまないよね。
———–はい、なじまない、という言葉ですね。音楽即興はもっとなじまない?
なじまないなあ(笑)。クラシック音楽の場合は、私は門外漢なんですけど、審査基準というのはなんとなくわかる。フィギュアスケートの技術点と芸術点みたいにね。そういうのが出せるじゃないですか。即興の場合はどうなんだろう。
———–クラシックは学校で長年、教える、教わるという場で培われる、学校がそういう基準自体の養成場所でもありますね。
そうですね。音楽における即興といってもいろいろだしなあ。和太鼓がでてくるかもしれないし、ピアノはもちろんあるのだろうし、普通に演奏するか、プリペアドみたいなことやるかもしれないし、どうしたらいいの?
———–中には順位はなじまなくて、それぞれの演奏が、あなたらしい、というような言葉を言われる方もおられます。
なるほど・・・、難しいよね。だいたい人に点数をつけるということ自体が難しいことだから。その基準が審査員それぞれ違う、ちょっとイメージがわかんないんですよね。
———–何か順位をつける、ということは、何か偏った目で見るしかないのでしょうか?
でしょうね。
———–では、その時点での、こういう偏りで見たものです、と。
そうですよね。
———–満遍なくというわけにはいきません。
そう。原則として、出られるのは会員の方なんですか?
———–いえ、一般公募で。できれば予選はYouTubeでという案ですから、海外からでも応募できるように。
それ面白いですね。予選である程度足切りしないとね。で、本選は大会で?
———–はい、実際に演奏して。でも大会でもYouTube枠を少し作るかもしれないです。
あー、前回ユーストで中継したじゃないですか。ああゆうこともできる。
———–ユーストはまだあんまり当てにできないです。その時の状態によって演奏の音はひどかったり。
予め撮ったのをYouTubeにアップして、公開か、限定公開で。
———–問題が大きいことを、あえて行うということではあると思うのです。ホントはこんなのをやらない方がいいのかもしれませんが。
(笑)
———–いずれにせよ、理由を明示して選ぶには違いないですね。
楽器演奏があまりにも下手だったからバツとか、そういうふうな(笑)
———–もちろんありますね。ある審査員によっては、ものすごく下手だったけど別の面がよかった、というのもあるかもしれません。
面白かったと。なかなかチャレンジングですね。話題つくりとしてはいいのかな。うまくいけばいいですね。
———–うまく、というのは、どう?
学会内、外部両方からある程度の人数が参加してくださって、話題作りになって、なおかつ、そこで何か得られるものがあれば。
———–やっぱりやらない方がよかった、というのもありえますが(笑)
そうそう、いろんなジャンルが混在したコンペティションがないわけじゃない。今続いているかどうかわからないのですが、デュッセルドルフで35歳までを対象としたコンペティションがあって、そこでは現代音楽もジャズもインプロみたいなことをやっているミュージシャンもジャンルにとらわれずに出場できました。賞金も出ていましたよ。ほとんどプロのミュージシャンが応募していたと思ったけど。
———–それは一括りで、ということで。
ジャンル毎に切らずにね。日本からも誰か参加するようにその宣伝をしてくれ、紹介してくれ、って言われたことが以前あって(笑)。だからジャンル毎のコンペティションだけとは限らないことは確かですね。そうそう今、思い出しました。
———–それと、この学会が探求すべきことと思われることを考える、何らかの材料にはなります。
きっかけとしてね。
———–まだそれが考えられてない。何を探求しているのか。
いっぱいあると思う。音楽即興でしょう。いくらでも。山ほど。どうしてみんな・・・?
———–(笑)若い人だったら、早くからやっておけばいいですね。
そうそうそう。まだ未開拓な分野ですから。
———–未開地。
いっぱいあると思いますよ。見つけてくれればいいと思って。外野として言ってます(笑)。いろんな切り口がありますよー。
———–横井さんもぜひ。
時間と体力があるとき(笑)
———–では、どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
追記)2011年5月下旬に『アヴァンギャルド・ジャズ - ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)という本が出版されます。論文ではありませんが、2009年の大会での講演とも関連する内容です。